「・・・っく」

血と一緒にわらいが込み上げる

なんて不様な。

 

 

*世界*

 

 

傷は確かめる必要がない程深い。

生温い液体。もう温度なんて感じないけど。

掌を腹に添えた

痛みすら、遠いところにある気がする。

浅い己の息だけが白く闇に溶けていく

 

この道に生きる者だ。思い残すものはない。
いや、火影に事を伝達出来ないのは心残りだが。
最後に汚点を残してしまった。   でも


世界は こんなにも静かで

妙に安らかな気持ちになった

すべてを捨てて いなくなる

それは甘美な誘いだった
   

誰もいない世界は、

けれど

 

 

 

貴方すら  いなくて

 

 

 

 

『自分の名前の意味、ご存知ですか?』

『 「急に起こる強い風」、だろ』

『・・・私のじゃないですよ。ゲンマさんの』

『自分のなんて興味の対象外』

 

 

その名を呼んでみようと口を開いた
でもそこからはただ空気と血と咳だけ漏れて

あの時伝えておきたかった

私にとって貴方は正に その名そのものだと云うこと

言って、貴方のその眼に映る光を、見届けたかった

 

 

 

ああこの胸は、心残りばかり だ。

彼さえいなければ、こんなに悲しくならなかったのに。

 

世界がかすむ

こんなにもどうしようもない躰でまだ、

助かろうとか

生きようなんて  思いやしなかったのに。

不様にも愚かにも  しぶとくも、まだ

 

 

 

 

 

この世に  しがみつこうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

(・ ・ ・あなたの、せいですよ)

 

戦って死ぬなら本望だ?笑わせる

貴方が死んだ後の死しか
私は喜んで受け入れられない

 

(あなたは私以上にしぶとそう、ですもんねぇ・ ・ ・)

ならば安心して逝ける日は遠い。

身勝手に少し溜息をついた。

 

 

痛みが戻ってきた腹に顔を顰めながら

ゆるゆると印を結び始める

 

 

 

 

月が、 少しわらった、  気がした。

 

 

 

 

 

 

+++

きれいに散るのもそりゃ素敵ですが、
しぶとくしぶとく、生きてる人は格好いいと思います。