空は快晴、海は穏やか。
夏島が近いらしいこの頃は頗る日差しが強い。
キッチンからトトトト、と包丁の音がする。
海のコックがいつものように昼食の準備をしているからだ。
気のいいこの俺は、機嫌が良いときは鼻歌なんかも漏らしたりするが
今現在、船医などが見たら泣き出しそうな殺気を振りまいている。
それでも一連の動作に淀みゼロなのはさすがだと言っていいんじゃねぇか。

自分を客観してとりあえず落ち着こうぜと思ったところで、また思考が逆走しそうになって何度目かの舌打ちをする。



ああクソ、なんてことだよ
何が楽しくてこの俺があんな芝生マンのこと目で追わなきゃいけねぇんだ畜生
思い出すだけでムセェ野郎のことなんざ考えちまってるんだよ
俺はレディたち一筋だっつううのにわけわかんね!

まぁきっとアレだ、同い年で男同士ですっげえ気に食わねぇヤツだから片に意識しちまってるってことだろつまり
このセンサイな俺の心にゃ一片たりとも共鳴しねぇ読めぇヤツなんだアイツは
イヤ、読めたって何も嬉しかねえが
馬が合わねぇ以前に脳回路違ってるんじゃねえのってかんじ

そのくせメシはきちんと食うしよ
たまにだけど俺が凄むからだけど

…ちゃんと、メシ、うまいってバカみてぇに歯見せて、ゆうし、よ。

前俺がキッチンで寝過ごしちまったとき肩に掛けてあったのはヤツ毛布だったりなんかも、して。

あ―――もう、ホント冗談じゃねぇってんだよ
俺らはまぁ同じ船のコックとクソ剣士でクルーで仲間で、そこまでは良い
喧嘩友だちってことで百歩譲ってダチってことにしても、まぁ良い

けど俺はこのビミョウな震えとか胸の高鳴りとか妙に落ち着かねぇ心境とか?
ラブコック的にはバッチコイな要素のオンパレードに心のどっか隅っこでもう勘づいちゃったりしてるってワケ

認めねえけどな。
そんなん意地でも認めねえけどな。


どうしようもなく不愉快になって
タバコ一本へし折っちまって
眉顰めてもう一本取り出して
全部吐き出しちまう勢いでケムリ吐き出して
甲板で眠りこけてるすべての元凶の腹に華麗に足技キメるべくキッチンを後にする




ああ、
空は海は今日も青い

太陽が否応なしに照りつけてまたヤツの緑色が目に焼き付いちまうじゃねぇかと
やっぱりこころのどっか隅っこのイカれた頭で思った。


 

* * * * *

06/10/7

サンジの口調書くのが楽しくて楽しくて!