夢を見ていた。
でも、内容はわからない
しかし悪夢だった
不安に、大きく鳴り続けるこの心臓・・・。

 

 

起きたときはまだ夜だった。

身を起こして、隣でやすらかに寝息を立てる男を見た。
いつもと変わらない、やはりやすらかな寝顔。

汗で髪が額に張り付いて気持ちが悪い。
私は肩で息をする。浅い呼吸を繰り返しても 錯乱した脳に酸素は届かないらしく


夢に乱された思考は   止まらない

 

 

返せ。返せ

・・・何をだ? ああ

 

お前は私から何を奪った?

 

逃げ道か、言葉か、義務か、自制か、寒さか、強さか、躰か?

盗られた部分に、でも
空しさを感じないのは他の何かで満ちているから では

お前は何を与えた?

居場所か、誠意か、自由か、欲望か、温度か、弱さか、それとも

心?

 

お前は何を奪い何を与えた

私に、この私の知らぬ間に

 

誰も何もいらない  あるのは

そう、孤独だけでもよかった。

残される孤独だけで良かった。

でなければ、  割り切らなければ

平気でなどいられない  狂ってしまう

置いていかれてなお立てたのは

個人に依存 しなかったからだ

 

それを それを

お前は知っていてこんなことをするのか

お前が死んだら私は

もう立てないことをわかっていて

それで 奪ったのか そして与えたのか

お前は必ず 置いていくのに

それをわかっていて なお

 

どれだけ卑怯なんだ

なのになんで涙が出るんだ

うれしい、と おもってしまうんだ

それでもいい、と なぜ、この心は叫ぶんだ

奪ったのはお前、与えたのもお前

 

でも

 

差し出したのは、受けとったのは  私

 

 

 

ああなんでこんなに胸が熱いんだ

まるでいつか身体が壊死していった時のような

どうしようもない激情が

 

忘れていた、どうしようもなく熱い痛みが

 

この身体を  駆けめぐる

 

 

 

 

急に身体が引き寄せられて、強く抱きしめられた。

彼は、赤くなっていたらしい私の瞼に顔を顰めて

まだ目の端に残っていた涙を吸い取る

 

・・・いつしか 朝歌の空は白んでいた 。

 

 

 

 

* * * * *

05/10/17

ついにやってしまった・・・飛虎聞。
この飛虎聞というジャンルは
恋情だけに限定されない、友情も信頼もひっくるめた愛情であってほしいと思います。