時刻は日付を跨ぐ頃。

場所はハヤテの家の一室。

小さめのテーブルの上にはすでに空けた瓶が数本。

加えていえば、俺は酔ってなかったけど ハヤテは少し酔っていた。

それで俺は酔ったふりして、ハヤテに抱きついておどけて言った。

 

「何でスキって言ってくんないの」

そんな質問、いつもならこいつは答えない。

今日もかわされて終わりかと思ってた。

 

心地よい夜風が吹く。

 

「言葉はあなたを、しばることになるでしょう。」

「…え」

ぽかんとした俺を見て少し ハヤテはわらった。

酒のせいで目元が僅かに赤らんで、妙に艶やかだ。

 

「そんなこと したくないんですね」

 

 

それはハヤテの本音。まるで自分に言い聞かせるように

呟くように発せられたハヤテの本心。

こんなにも ・ ・ ・ ああ

 

「…っ?ゲンマさん?」

 

床に押し倒されたハヤテは目を白黒させて俺を見上げた

その瞳も腕の中の細い躰も俺の名を呼ぶ唇も

ああこんなにも すべてが

 

・ ・ ・ 愛しい

 

 

ハヤテがどう思ってるかなんて知らないが、俺は
一番好きな奴にしばられて生きていくのは、幸せなことだと思う

例えばハヤテが死んだら俺はその思い出とか言葉とか表情が一生忘れられずにしばられて生きていくのだろうけれど

それは決して、  不幸ではない。

だから

 

「スキだ」

君の言葉でしばってほしい

 

「…スキだ」

この心を  強く 強く

 

 

「ハヤテ」

そうすればいつか独りになっても

 

 

 

 

「愛してる」

 

 

 

 

強く結ばれた心は  あたたかいだろうから

 

 

 

 

 

***

06/1/5

お題「何の脈絡もなく」
なんとなく「とらわれたこころ」とは対照的な仕上がりに。