白羅ルイ様がお題文「眠り姫」の続編を書いて下さいました!


 

『 眠  姫 』

 


「あ、そういえばハヤテの奴目覚めたって」 ゲンマは、何気ないアンコの言葉に持っていた書類をおとした。
「い・・今なんて?」
「だから、ハヤテの意識が回復したって言ってんのよ!」
うざったそうに繰り返したアンコに、アンコのそばにいたライドウが続ける。
「けど、さすが綱手様だよな、ずっと眠ってた人間を一発で起こすなんてな」
「そうよね〜。『キス』一発で起こすなんてね〜」
アンコの台詞に、ゲンマの口から、今度は爪楊枝が落ちた。
「な・・んだと・・」 聞いたことが信じられないという表情をするゲンマに、アンコは意地悪く笑った。
「すっっっごく濃厚な口付けだったわよ♪」
「!!」
聞くが早いか書類を放ったまま姿を消すゲンマ。そんな彼の気配が完全に消えてから、アンコとライドウは忍び笑いを交わした。
「ま、実際は口移しでチャクラを与えて起こしたってやつだけど、ね」
「めちゃくちゃ焦ってたよな」
「その上、いろいろ誤解したまま行っちゃったしね」
「あえて誤解させたまま行かしたんだろ。
・・ま、でもこれからのゲンマのノロケに付き合わされる俺たちとしてはこれくらいの悪戯は許されないと」


そんな悪友たちの「かわいらしい」悪戯を間に受けてしまったゲンマは、全速力で辿り着いたハヤテの病室のドアを開けた。
「ハヤテ!」
だが、そこにいたのは。
「ゲンマさん、心配をおかけしました」
「なんの用だ」

ほほ笑むハヤテと、どことなく不機嫌そうな五代目火影、
「つ、綱手様・・」
その人である。
「な、なぜ綱手様がここに?」
アンコ達からキスのことを聞かされているとはいえ、相手はあのエセ写輪眼ではなく火影、自然と腰が低くなる。
そんなゲンマの様子に大してなにかを思った様子もなく、綱手は淡々とつげる。
「検診だ。ホントは私がやるまでもないんだが、どうしても、と頼まれてな」
「お手数をおかけします」
「礼ならあいつにいいな。検診を頼んできたのはあいつだ」
促されるまで考えもしませんでした、的な綱手の発言に、ゲンマはカチンとくるものがあった。
「・・火影様、今の発言はどういうことでしょうか」
「なんだい?」
「木の葉の里長としてふさわしい発言ではなかったと思うのですが」
「はあ?
何言ってるんだい?
過労と睡眠不足が原因の眠りにつける薬は休養なんだが?」


それなのにどう治せと?と続けた綱手に、ゲンマは微妙な認識の違いを感じた。
「あの、綱手様」
「なんだい」
「ハヤテを起こしたのは綱手様じゃないんですか」
ゲンマに綱手は訝しげな表情で、
「さっきからおまえは何を言ってるんだ。
こいつは昨日、私が検診にきたら起きてたんだ」
「えっ、アンコ達は綱手様がキスで起こしたって言ってましたけど」
綱手は言われた言葉に一瞬ぽかんとしたが、意味を理解すると同時に激怒した。
「何ばかなこと言ってるんだい!
仮にも三忍の一人と言われ、火影のこのあたしが、なんでこんな半病人っぽい相手をねむり姫役にした上、王子のように目覚めのキスなんてしなくちゃいけないんだい!
火影ばかにしてんのか!」
「でもアンコの奴がそう言って・・」

コンコン

ましたよ、と続けようとしたゲンマの声は、ノックの音にかきけされた。
「どうぞ」
綱手とゲンマの言い争いを訳が分からず見守るしかなかったハヤテが返事をしてドアを開くとそこには。
「こんにちはってば」
金と青の色彩が綺麗なこどもが小さな植木鉢を抱えて立っていた。
「おや、ナルトくん」
いらっしゃい、と迎えるハヤテ。


「お邪魔しますってば」
抱えてきた観葉植物の植木鉢をお見舞いとしてハヤテに渡したナルトは、綱手とゲンマを見た。
「綱手のばあちゃんにゲンマ兄ちゃん、病室で騒いじゃ駄目だってばよ」
「おや、聞こえてたのかい」
「内容は分からなかったけどばあちゃん声でかすぎだってば」
「そりゃ悪かったね」
「・・悪い」
ゲンマとしては怒鳴っていたのは綱手だけだろと言いたいが、悲しいかな、綱手は上司であるため言えるわけがない。
ナルトはゲンマの内心の葛藤など知りもせず、ハヤテに話しかけた。
「ハヤテ兄ちゃん、具合はどうだってば?」
「だいぶよくなりました。火影様に診て頂けたおかげで、数日で退院してよいとの許可をいただけましたし」 ハヤテの台詞にナルトはパアッと顔を輝かせた。
「ありがと、ばあちゃん!」
「まあ、かわいいナルトの頼みだからね、検診くらいお安いごようさ」
さっきと言ってることが違うとつっこみを入れなかったゲンマは賢明であろう。
綱手は先程ゲンマに向けていた形相が嘘のような穏やかな表情をしていた。


「ばあちゃん、ほんとにありがとうってば。
サスケとカカシ先生も診てくれたし、オレをチャクラ注入で起こしてもくれたし、 ホントに感謝してるんだってば」
ゲンマはほほ笑んだナルトの台詞にひっかかるものを感じた。
アンコはなんと言っていた?
「チャクラ注入って、ちなみにどうやって?」
「口移しに決まってるだろう」
おそるおそる尋ねたゲンマに対し、剛毅に告げた綱手は、微笑を浮かべた。
確かに、とゲンマは思う。
 確かにアンコもライドウも、『ハヤテ』が綱手の治療を受けたとも、綱手とキスをしたとも言わなかった。
しかし、彼らの言い方は、間違いなく誤解を引き起こすものだった。と、いうことは。
(あいつら・・!)
はめられた、もしくはからかわれた、と気付いて、ゲンマはどっと疲れた気がした。
(かなり焦ってたんだな、オレ)
不思議そうに自分を見つめる三対の瞳に曖昧な笑みを返して、ゲンマは綱手に向き直った。
「綱手様、さしでがましい真似をして申し訳ありませんでした」
「構わん。
恋愛は自由だしな。
ナルトと里に被害がなければいい。
あとはおまえ達でよろしくやるといい」


「ゲンマ兄ちゃん、ハヤテ兄ちゃん、またねってば」
綱手とナルトはハヤテやゲンマの言葉を聞かず出て行ったため、病室は一気にしんとなった。その沈黙の中、ゲンマはベッドに腰掛けて口を開いた。
「・・ハヤテ」
「はい」
「・・あんま待たせんじゃねえよ」
「・・はい」
そっぽを向きながらの台詞にハヤテは、相変わらず不器用な人だと苦笑した。
「ゲンマさん」
「なんだ」
「かなりお待たせしてすみませんでした」
「全くだ」
苦笑しながらハヤテと顔を合わせたゲンマはそのまま顔を寄せ、ハヤテも倣って目を閉じた。


おまけ(病院の廊下にて)。
「にしても、悪いね、ナルト」
「何がだってば?」
「あんたのファーストキスを奪っちゃって」
「ん〜、ばあちゃんだったらいいってば。
それに初めてじゃないし。
どうせなら、ばあちゃんがファーストキスの相手ならよかったってば」
「・・初めて、じゃない?」
「そうだってば」
「・・誰だい?」
「サスケ」
事故キスだってば、と続けるナルトの声は、綱手の耳に届いていない。
「・・そうかい」
(うちはサスケ、許すまじ)
「ばあちゃん、なんか言ったってば?」
「いいや、なんにも」
綱手はにっこりとほほ笑みながら、サスケをどうしてやろうか考えていた。


木の葉病院のベッドの上でサスケが重傷を負っているのが発見されたのは、その翌朝のことである。

 


 常日頃お世話になっているルイ様より頂きました〜っ。
 なんと当サイトの「眠り姫」の続編、ということで…!
 
恥を承知でお教えして本当によかった(ボソリ)
 序盤の特上の掛け合いが大好きです。
 唯我独尊ツナデさま!どこまでもラブラブゲンハヤ!(しかもゲンマがヘタレでかなりツボでございますムフー!)
 そしてなにより、ナルトスキーなルイ様による愛くるしくてたまらないナルト…っ。

 大切にさせて頂きます♪
 お礼は必ずっv
 お忙しい中、本当にありがとうございました!

 2006/06.